一日目 夕方から
昼食の蕎麦を食べ、明神池の素晴らしさを案内板と心で見たのでそろそろ引き返すこととした。次回こそはしっかりと財布という準備をしてからまた来ようと思う。
明神橋を渡る。
ただ、橋を渡るだけでなんでこうも気分が高揚するんだろうか。恐らく自分の体重を支えている橋が歩くたびに、微妙に揺れる事で他の散策者へのいらぬ誤解を生み「なんかごめんなさい。」というの結果だと思う。
また少し歩くと朝焼けの宿 明神館がある。
振り返ると明神岳もあり、天気の良さも相まってとても清々しい気持ちになる。ここら涸沢へとより奥地へ向かうか、河童橋方面に戻るルートになる。
当初は涸沢の手前の橋まで行く予定をしていたが、のんびりと写真を撮りながら歩いていたので帰りの時間オーバー。
中には暗い時間帯からヘッドライトのみで移動する強者達がいるようだが、初めての道と場所でそこまでのリスクを負いたくないので、ここはテントのある小梨平キャンプ場へ戻る事とした。
正確に名称すると行きは梓川の”右岸コース”で行き、”左岸コース”で戻ってきたという感じだ。帰りとなる左岸コースは右岸コースと比較して、しっかりと整地されており、かなり歩きやすい。
因みに風物詩?的な野生の猿がいるとのことだったが、私自身は見る事はなかった。いや遭遇したいわけではなかったのだが、少し残念な気持ちになっただけだ。
やっぱりこういった自然の中に身を置くのは気持ちが良い。
テントに戻ると設営時にはいなかった方々が登山や散策から帰ってきたのか、多くの人で賑わっていた。
ただ、賑わっていたというのもファミリーキャンプ場で見かけるワヤワヤした感じではなく、しっとりとしながら目の前の光景を楽しみながらゆったりと疲れを癒している感じだ。これはこれで素晴らしい。
周辺が山に囲まれており立地から日が落ちるのが早く、17時ごろになった時間で周りの方が食事の準備を始めている。
個人的に19時が夕食の時間という先入観があったが恐らく翌朝の登山に備えて早く就寝する為であろう。やはりこの辺りはこの立地ならではの雰囲気と言えよう。
登山予定のない自分が遅めの夕食で周りの方に睡眠の妨げになってもいけないので、同じように私も食事とした。やはりキャンプといえど共同の場。見知らぬ相手ではあるが、お互いが気持ちよく過ごすためにこういった行動をとる事が大切だと思っている。
今回は、普段は肉を焼くことに生を実感するタイプではあるがあまり荷物も増やしたくなかったので、お湯を入れて待つだけのフリーズドライ食品のビリヤニを利用してみた。
ビリヤニ。全くもってしらなかったメニューだが、一部の界隈で人気(らしい)いわゆるインド系混ぜご飯。カレーのようなスパイスがキリッと効いている大人な混ぜご飯だ。
はじめてのご飯系のフリーズドライの利用したが、意外といけない感じでもない。食感の少ないお粥が苦手なので、あまり期待していなかったが、ベチャとはしておらず、意外とお米らしい食感もあった。
ただ、欠点があるとすると何よりも大食漢の私としては一つの物足りない気持ちがある。
ただ、ここは小梨平キャンプ場。徒歩1分で小梨平食堂がある。そうなると答えはーーー。
我慢。我慢。
最近、荷物の軽量化の前に自分を軽量化した方が遥かにメリットがあるという事に今更ながら気付いた私としては、ここはグッと堪えた。自分を自分で褒めてあげたい。
そんな事を思いながら少し横になって、周辺が暗くなった19時ぐらいに空を見上げると、空腹感を満たすかの様に満天の星空がそこにはあった。
10月と言えど上高地は標高が1,500m。日が暮れるとかなり寒くなる。平野部の真冬ほどではないが、しっかりとした上着を着ないと寒いレベルだ。
まだまだ眺めて撮影をしたい気持ちはあったが、寝ている方も少なからずいるので早めの就寝としたーーー。
夜明け前。
まだ薄暗い中ではあるが、もともと岳沢湿原の朝が綺麗との情報を見ていたので撮影のためにヘッドライトを点けて行動を開始する。
「流石に5時は早いかなぁ」とか思っていたが、やはりここは山岳地帯。既に多くの登山者が思い思いの気持ちを胸に、歩を進めていた。
早朝の上高地は昼間の景色とはまた違った色合いを見せてくれ、普段は「寝れるだけ寝る」をモットーにしている私だが早起きして良かったと思う。
静けさが心地良い。
薄暗いとは言え外灯もほとんどない上高地。いささか不安ではあったが、この景色を見ると勇気を出してきた意味があったと思う。(それなりに人はいたけどね)
日が昇ってきたのでテント場へ戻る。何よりも飯だ。ご飯だ。昨晩の食へのフラストレーションが溜まっている胃に一晩耐えたご褒美を与えなければならない。
昨晩に続いて朝食もフリーズドライのビビンバをキめていく。個人的にアウトドアの場ではカップ麺・カップ焼きそばなどは意外と避けている傾向にある。
手軽ではあるが残った汁などの処理に困るからだ。飲み干すのも一つの手だが、最近油ものがキツくなってきた三十代半ばの胃にはカップ麺の汁はなかなかへビーなのだ。
お湯を注ぎ。待つ。しかも、湯切りや残り汁がない。フリーズドライはなかなかにイイ。
肝心のお味はというと「コレはハズレか?」と思えるぐらい味が薄かったがなんて事はない。ただ、かき混ぜ方が甘く、辛い味が下に溜まっていただけ。
ただ、気付いた時には遅く「ムフッ。辛ッ」と思いながら完食。誤解がない様に伝えるとしっかりと混ぜて食べればピリ辛ぐらいでとても美味しいビビンバだった。
食事の後はもちろんコーヒーだ。
登山者たちがいそいそ歩いている前でコーヒー豆を挽き、お湯を注いでいると何とも申し訳ない気持ちになるが、私にも譲れないものがある。ゆったり。景色を。コーヒーを楽しもうではないか。
肌寒い朝の空気にホットコーヒーを飲むひととき。この時間がたまらなく好きだ。
テントを撤収し、また散策を開始した。
この二日間ほとんど歩きっぱなしではあるが、散策路を歩いていただけという事もあり、そこまで高低差や難所もなく、手軽に自然を楽しめ、疲労感もそこまでない。
一足早く秋の訪れを感じる。
散策を終え、帰路につくが上高地という場は手軽に国立公園を楽しめる場だと感じる。登山やキャンプをするならそれなりの装備や準備は必要だが、河童橋周辺を散策するのであれば歩き易いスニーカー等でも十分に可能だ。
正直、今回は上高地が初めて体験という事もあってある意味で様子見としてそこまで挑戦はしなかったが、来年も訪れたい。そんな事を思いながら帰宅した。
おわり〜
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